造作家具的な考えを変える
「造作家具」は値段と品質がアンバランスなことが多いです。確かに自分の思い通りの物が作れますが、コストが高くなります。安易に特注すると、コストに見合った品質のものができません。そして、リフォームや引っ越しの際は、それを再利用できず、廃棄物を増やします。
しかし、日本ではまだ「造作家具」の意識が根強く、それがシステム収納の普及を遅らせています。例えば高層マンションは、上の階に上がるに従って、柱が細くなり、収納が納まる間口が徐々に広くなります。これに合わせて「造作家具」でウォールtoウォール(壁の間口にぴったり納める)を実現しようとすると、マンションの各階層のキャビネットの間口を、ミリ単位で変えなくてはなりません。
これはメーカーや施工業者にとっては大変な負担になります。さらに実際には図面と躯体の精度には誤差があるので、現場で支輪や台輪を削り、寸法を微調整する必要があります。
現状では、この「造作家具的」な考え方がシステム収納にも当てはめられてしまっています。例えばシステムバスやシステムキッチンならば、設計者にもその理解が進んでいます。しかしシステム収納は木製品ですから、切ったり貼ったりできる、と思ってしまいがちです。そう考えてしまうと、前述のシステムが瓦解してしまうのです。
ひとつでも特注部材が入ると、コンピュータで自動的にできる部材を拾い出し、手作業で行わなくてはなりません。するとミスが出る可能性がありますから、納品時に部材が揃っているかどうか確認する必要がでてきます。こうして手間が増えることで、コストが大幅に上がり、納期も遅れてしまうこともあります。